イギリスのトラッドスタイル(トラディショナル:伝統的な)と聞いて、どのようなアイテムを思い浮かべますか?
私なら、ツイードジャケット、トレンチコート、ボウラーハット、ブローグシューズといった、英国の伝統や職人技が生きる洗練されたスタイルを思い浮かべます。
これらのアイテムは長い歴史の中で培われ、今もなお根強い人気を誇ります。伝統を大切にするイギリス人の誇りや気質がうかがえる点もこれらのアイテムの魅力だと思います。
以下に、伝統的なイギリスのスタイルの一例をご紹介します(もちろん他にもたくさんのアイテムがあります)。
イギリス(ブリティッシュ)トラッドなファッションって?
「ブリティッシュトラッド」という言葉は、一般的にイギリスの伝統的なファッションスタイルを指します。
これには、ツイードジャケットやトレンチコート、ブローグシューズといったクラシックなアイテムをそのまま取り入れることもあれば、伝統を活かしつつ現代的にアレンジしたスタイルを意味することもあります。
例えば、英国の仕立て職人によるクラシックで上品なシルエットや、伝統的なツイードやタータンといった英国生地の使用、カントリー調のスタイル、アースカラーなどの落ち着いた色合いやレイヤリング(重ね着)などが挙げられます。
ツイード(Tweed)

ツイード(Tweed)は、イギリスのカントリースタイルを象徴する生地で、狩猟や射撃などのアウトドア活動と深く結びついています。
頑丈な質感と優れた保温性を持ち、伝統的なイギリスのファッションを愛する人々にとって欠かせない素材です。
長い歴史を持ちながらも、現在でもファッションに取り入れられ続けています。伝統的なスタイルを守りつつ、現代のデザインやシルエットに適応し幅広いシーンで着用されています。
ツイードはウール素材で作られ、ヘリンボーン(Herringbone)、ハウンドストゥース(Houndstooth)、チェック柄(Plaid) など、多様なパターンで織られているのが特徴です。寒冷な気候に適しており、耐久性と暖かさを兼ね備えているため、イギリスの伝統的なカントリースタイルやアウトドアウェアとして長く愛されてきました。ジャケット、スーツ、コート、キャップ、パンツ、スカートなど、幅広いアイテムに使用されています。
ツイードはイギリス各地で生産されていますが、特に有名なのがハリスツイード(Harris Tweed) とシェトランドツイード(Shetland Tweed) です。
ハリスツイード

スコットランドのアウターヘブリディーズ諸島で、100%純粋な新しいウールを使用し、島民の手で織られる伝統的な生地です。スコットランドの遺産を象徴する存在であり、豊かな自然からインスパイアされた色合いやパターンが特徴です。品質は厳格に管理されており、1993年のハリスツイード法(Harris Tweed Act of 1993) によって保護され、地域経済や職人技を支えています。
シェトランドツイード
スコットランドのシェトランド諸島で生産されるツイードで、軽く柔らかい質感が特徴です。その美しさと耐久性に優れ、世界中で高く評価されています。
トレンチコート(Trench Coat)

トレンチコートは、もともとイギリス軍用にデザインされた防水性のある伝統的なコートです。
名前の由来は、第一次世界大戦中の「塹壕(trench)」にあります。塹壕は戦場で兵士が地下に掘った道で、兵士たちはその中で寒さや湿気と戦わなければなりませんでした。
トレンチコートは、塹壕内での雨や湿気を防ぎ、体を暖かく保つためにデザインされました。その名前も、「塹壕」を意味する「トレンチ」に由来しています。
19世紀後半から20世紀初頭にかけて、世界的に有名なイギリスのブランド「バーバリー(Burberry)」と「アクアスキュータム(Aquascutum)」がそれぞれ開発したと主張しています。アクアスキュータムもトレンチコートを手がけていましたが、軍への提供はバーバリーだったとされています。
バーバリーは第一次世界大戦中、イギリス軍の将校たちにトレンチコートを提供し、そのデザインや機能性が軍の要求を満たしていたため、軍の公式装備として広く採用されました。特に防水性と耐久性が求められた時期に、バーバリーのトレンチコートは非常に重宝されました。
特に冬の寒さから身を守るために作られたトレンチコートは、ダブルブレストとベルト付きのウエストでシルエットが引き締まり、スタイリッシュな印象を与えます。長い歴史を持つこのコートは、現在でもイギリスの街中でよく見かける定番アイテムです。
バーブァージャケット(Barbour Jacket)
バーブァー(Barbour)ジャケットは、ワックス加工されたコットン素材で作られており、防水性が高く、寒冷な天候や湿った環境でも快適に過ごすことができます。
狩猟や射撃などのカントリーアクティビティに適しており、イギリスの田舎での生活には欠かせないアイテムです。シンプルながら機能的で、クラシックなスタイルが特徴です。
1894年に創立したバーブァーは、イギリスの農村地域やアウトドア活動(狩猟や釣りなど)に適したウェアを製造してきました。イギリスの伝統的なライフスタイルに合わせたジャケットが多く展開されています。
代表的なモデルは「ワックスジャケット(Wax Jacket)」や「ビデイルジャケット(Bedale Jacket)」等と呼ばれています。シンプルで落ち着いたデザインは、トラッドスタイルの中でもアウトドアやカントリーライフを象徴するアイテムとして広く知られています。
タタサールシャツ(Tattersall Shirt)
タタサールシャツは、細かい格子柄が特徴的なシャツです。この柄はタータン模様の一種で、白やクリーム色の地に青、緑、赤などの色が組み合わさっています。
その起源は18世紀のイギリスに遡り、最初は馬の毛布のデザインとして使用されていました。その後、このパターンがシャツやジャケットなどの衣料品に取り入れられ、特にカントリースタイルやトラッドファッションの定番として親しまれるようになりました。ギンガムシャツとともに、ツイードスーツやジャケットと組み合わせて田舎風の服装としてよく着用されます。
カジュアルでありながら品格を感じさせ、日常的に使いやすいアイテムです。
フラットキャップ(Flat Cap)

フラットキャップ(ニュースボーイキャップ)は、イギリスの伝統的な帽子で、ウールやツイード素材で作られています。もともとは労働者階級の間で広まり、その後、イギリスのカントリーウェアとして定着しました。普段使いしやすく、イギリスらしい雰囲気を演出するアイテムです。
個人的には、年配の方が好んで着用している印象があり、ご近所のおじさんがかぶっているのを見かけることが多いです。また、イギリスのシットコム「Only Fools and Horses」の登場人物を思い出してしまいます。
しかし、近年では若い世代の間でもファッションアイテムとして取り入れられることがあり、クラシックスタイルやビンテージファッションの人気が高まる中、フラットキャップもその一環として再評価されています。少しレトロな雰囲気を加えたいときに取り入れられることが多いようです。
ボウラーハット (Bowler Hat)
ボウラーハットは、イギリスを象徴するアクセサリーの一つで、丸みを帯びたクラウンと狭いツバが特徴的な帽子です。1850年代にイギリスで誕生しました。もともとは乗馬用にデザインされましたが、上流階級の男性たちに好まれ、ビジネスマンや紳士の象徴として広まりました。
イギリスの喜劇俳優のチャールズ・チャップリンのボウラーハット姿は有名ですね。
その特徴的な丸みを帯びたクラウンと狭いツバは、ウールやフェルトなどの素材で作られ、耐久性と保温性に優れています。
アメリカの女優ダイアン・キートンは映画『アニー・ホール』でマニッシュなファッションスタイルで広く知られています。この映画では、ボウラーハットをはじめとする男性的なアイテムを女性らしく着こなすことで、彼女の独自のスタイルが際立ちました。アメリカ映画で表現されたものの、英国伝統のファッションがアメリカの映画や文化に影響を与え、再評価されることとなりました。
ボウラーハットは、スーツやフォーマルな服装だけでなく、カジュアルなコーディネートにも取り入れられており時代を超えて愛されています。
例えば、デニムジャケットやチノパンツと組み合わせることで、伝統的なスタイルに現代的なカジュアルさを加えることができます。また、従来のウールやフェルトに加えて、現代ではレザーやデニムなどの素材が使われることもあります。
クラシックなブラックやブラウンに加え、鮮やかな色やパターンが施されたボウラーハットも登場しています。
タータン(Tartan)

タータンはスコットランドの伝統的な模様であり、その歴史は非常に古いです。
6世紀にはハイランド地方の人々がタータンを身に着け、氏族ごとに異なるパターンを持つようになりました。これは氏族の象徴としての役割を果たしていました。
キルトは特徴的なタータン生地を使用したプリーツスタイルの男性用スカートであり、スコットランドの伝統的な衣装です。家系ごとに異なる独自のタータンが使われます。キルトは正式な場や文化的なイベントでよく着用され、チャールズ国王も公式の場で身に着けることがあります。
タータンは伝統的なキルトだけでなく、インテリアデザインやファッションアイテムにも広く取り入れられています。コートやジャケットなどの衣類だけでなく、バッグやベルト、帽子といったアクセサリーにも多く使用されています。また、バーバリーやアクアスキュータムのチェック柄も、タータンの伝統から影響を受けているとされています。
ブローグシューズ(Brogue Shoes)

ブローグシューズは、装飾的な穴飾り(ブローギングパターン)が特徴の革靴で、スコットランドやアイルランドの伝統に起源を持ち、現代の英国ファッションにおいて定番となっています。
これらの穴飾りは、もともと湿地を歩く際の水はけを良くするために開けられたもので、後に装飾的な要素として進化したと言われています。また、縁やパネルの縫い目にギザギザの縁取り(ピンキング)が施されていることが多いです。もともとアウトドア用にデザインされたため、構造的には頑丈で、厳しい条件に耐えることができます。
ブローギングの程度(控えめなものから広範囲にわたるものまで)により、靴のフォーマル度が変化します。ブローグはフォーマルからカジュアルまでさまざまなシーンで適応可能で、ダークブラウンやブラックのレザーで作られたブローグシューズは、どんなコーディネートにも自然に溶け込みます。
現代的なアレンジとしては、スエードや合成素材、さらにはエコフレンドリーな革やリサイクル素材を使用して、よりモダンで実用的なデザインに仕上げたり、鮮やかな色やツートンカラーでファッション性を高めたりしています。
オックスフォード/ダービー(Oxford/Derby)
オックスフォードシューズ(Oxford Shoes)はイギリス発祥のクラシックな靴のスタイルです。
細長くテーパードしたつま先を持ち、エレガントでフォーマルな印象を与えます。多くのオックスフォードシューズは、ステッチ入りのレザーソール、低いヒール、露出した足首を特徴とし、スリムでフォーマルな外観を作り出します。
似たようなスタイルのイギリス発祥のダービーシューズ(Derby Shoes)もあります。
オックスフォードシューズと似ていますが、両者の違いは靴ひもを通す穴(アイレット)の部分にあります。オックスフォードシューズは「クローズド・レイシングシステム」を採用しており、アイレットのパーツ部分が靴の一部のように縫い付けられています。このため、スリムで洗練された外観が生まれます。
一方、ダービーシューズは「オープン・レイシングシステム」を採用しており、アイレットのパーツ部分の両端が縫い付けられているだけです。これにより、パーツ部分を広げて紐の結び具合を調整でき、甲の高さに合わせてフィット感を調整することが可能です。
オックスフォードとダービーでは、オックスフォードはフォーマル向けであると言われます。ただし、どちらもクラシックでスマートなデザインなので、フォーマルからカジュアルまでさまざまな場面に適応できます。
モンクストラップ(Monk Strap)
モンクストラップシューズは、従来の靴紐の代わりにバックルとストラップで留める独特なスタイルのドレスシューズです。その起源は中世にさかのぼり、ヨーロッパの修道士たちが重労働に適した、より保護力の高い履物を求めたことに由来しています。
19世紀後半、イギリスの靴職人エドワード・グリーン(イギリスの老舗ブランド)は、モンクストラップシューズを革新・改良させて広く普及させたとされています。
現在のモンクストラップシューズは、シングルバックルとダブルバックルのデザインがあり、フォーマルとカジュアルの要素を兼ね備えた多用途なスタイルとして人気です。バックルが1つのデザインは「シングルモンク」、2つのバックルがあるデザインは「ダブルモンク」と呼ばれます。
オックスフォードシューズよりややカジュアルで、ダービーシューズよりフォーマルな印象を与えるとされています。
ブーツ
チェルシーブーツ(Chelsea Boots)

チェルシーブーツは足首丈のブーツで、丸みを帯びたつま先とサイドにゴムが入ったデザインが特徴です。足首周りのフィット感に加え、履き口の後部にはブーツを引き上げるためのループやタブが付いていることが多いです。
最初のチェルシーブーツは、ヴィクトリア女王の靴職人ジョセフ・スパークス・ホールによって1837年に考案されました。彼は、靴紐やバックルなしで簡単に履けるように、両サイドに伸縮性のあるインサートを備えたアンクルハイブーツを作りました。これらのブーツは当初「パドックブーツ」や「ジョセフ・スパークス・ホールブーツ」と呼ばれていました。
女王はこのブーツを気に入り、日常的に履いていたと言われています。このブーツは乗馬だけでなく、歩行用としても人気がありました。
チェルシーブーツは1950年代後半から1960年代初頭にかけて、ロンドンのモッズサブカルチャーや、50年代半ばに台頭したクリエイティブな集団「チェルシー・セット」の間で人気を博しました。この影響で「チェルシーブーツ」と呼ばれるようになりました。
ビートルズやローリング・ストーンズといったミュージシャンが頻繁に履く姿が見られ、チェルシーブーツはファッションの定番として確立されました。特にビートルズは、キューバンヒールと尖ったつま先が特徴の「ビートルブーツ」と呼ばれるチェルシーブーツのバリエーションを広めました。
現在、チェルシーブーツはその汎用性と永続的なスタイルで高く評価され、英国ファッションのタイムレスな要素となっています。
チャッカブーツ(Chukka Boots)
チャッカブーツは、2~3組の靴ひもを通す穴(アイレット)を持ち、通常スエードまたはレザーのアッパーで作られたくるぶし丈のブーツです。汎用性が高く、快適に履けるのが特徴です。
20世紀半ばに人気が高まり、「チャッカ」という名前については諸説あるそうですが、一般的にポロ競技に由来すると考えられています(ただし、ポロ競技では通常ジョッパーブーツなどの乗馬靴が用いられ、チャッカブーツは使用しない)。また、1920年代にアンクルブーツと乗馬ブーツのハイブリッドとして登場したともいわれています。
チャッカブーツを有名にしたのはウィンザー公(エドワード8世(Edward VIII))です。1920年代から1930年代にかけて、ポロ競技に精通し、ファッションアイコンとしても知られた彼が頻繁に着用したことで、多くの男性に浸透しました。
20世紀半ばには、機能的なフットウェアからファッションの定番へと変化し、ビートニクやモッズなど、さまざまなサブカルチャーの間で人気を博しました。
チャッカブーツは、スポーツ由来のため、フォーマルな装いには避けるのが無難ですが、カジュアルすぎるわけでもないので、ビジネスカジュアルなどの中間的なドレスコードの場で活用できます。
デザートブーツ(Desert Boots)
デザートブーツはチャッカブーツの一種で、1950年代にイギリスのクラークス社(現在のClarks)によって普及しました。
くるぶし丈のスエードのアッパーとクレープラバーソール(ゴム底)が特徴です。
クラークス社の創業者のひとりであるネイサン・クラーク氏は、ビルマに派遣された際、他の兵士たちが履いている色の異なるチャッカブーツに気付きました。それは南アフリカの兵士たちが砂漠地帯で歩きやすいように軽量で滑りにくいよう作られたブーツでした。
その機能性に着想を得て、クラーク氏は英国陸軍向けにデザートブーツをデザインしました。特徴として、粗いスエードのアッパーとクレープラバーソールが使われ、従来のチャッカブーツとは一線を画していました。
デザートブーツは軽量で耐久性のあるスエード素材が使われ、第二次世界大戦中には英国軍の兵士によって着用されました。その後、カジュアルファッションとして人気を集めました。
Clarks(クラークス)のデザートブーツは1949年のシカゴシューズフェアで紹介され、またイギリスの男性用ファッション誌「エスクワイア」でも取り上げられたことから、人気が急上昇しました。
チャッカブーツと同様に、モッズやビートニクなど、1950年代から1960年代のイギリスの若者文化の中でも急速に広まりました。スティーブ・マックイーンなどの象徴的な人物が愛用したことでも、デザートブーツはファッションの必需品としてその地位を確立しました。
Clarksなどのブランドは、デザートブーツを英国ファッションの定番アイテムとして位置づけました。
チノパンやテーラードパンツと組み合わせることが多く、洗練されつつもリラックスした印象を与えるアイテムとして今でも人気があります。
ブローグブーツ(Brogue Boots)
上述のブローグシューズ(Brogue Shoes)のブーツバージョン。
ウェリントンブーツ(Wellington Boots)

ウェリントンブーツ(通称「ウェリー(wellie)」)は、日本で言う「長靴」です。
雨の多いイギリスでは、田舎でのアウトドア活動やフェスティバルなどで活躍するアイテムです。
ウェリントンブーツは、軍の需要に応じた革新と、実用性を重視したデザインが組み合わさった歴史を持っています。その起源は19世紀初頭にさかのぼり、初代ウェリントン公爵アーサー・ウェルズリーと深い関係があります。
1800年代初頭、ウェリントン公爵は戦闘用にも夜会用にも使える、実用的でスタイリッシュなブーツを求めていました。ウェリントン公爵は、ロンドンのセント・ジェームズ・ストリートにある靴職人ジョージ・ホビーに、当時人気のあった軍用靴・ヘッセンブーツの改良を依頼しました。
出来上がったブーツは脚にぴったりとフィットし、装飾的なタッセルが取り除かれ、ローヒールの子牛革で作られました。この新しいスタイルは「ウェリントンブーツ」として知られるようになり、すぐに英国紳士の間で人気を集めました。
1856年、「ノース・ブリティッシュ・ラバー・カンパニー(North British Rubber Company、後のハンター・ブーツ(Hunter)社)」は、ウェリントンブーツのゴム製バージョンを製造し始めました。長靴を想像していただいたら分かりやすいですが、ゴム製なので防水性に優れ、泥だらけの環境に適していました。
ゴム製ウェリントンブーツの実用性は、第一次世界大戦中に明らかになりました。イギリス軍は塹壕にいる兵士たちが寒さや湿った環境に対応できるよう、このブーツを活用しました。
またその後、足を乾いた状態に保つことが重要な農業や産業など、さまざまな分野で広く使用されるようになりました。
現在、ウェリントンブーツは多くのワードローブの定番アイテムとなっています。すべてのイギリス人がウェリントンブーツを使用しているわけではありませんが、英国の田舎暮らし、農作業、庭仕事、フェスティバルなど、屋外活動でよく使用されます。現在では、さまざまな色や柄があり、ファッションアイテムとしても利用されることもあります。
セーターなど
フェアアイルセーター(Fair Isle sweaters)

フェアアイルセーターは、シェトランド諸島の小さな島、フェアアイルに由来するニットウェアで、複雑なパターンと鮮やかな色合いが特徴です。豊かな歴史を持つこのセーターは、寒い季節にはもちろん、カジュアルからフォーマルな場面まで幅広く活躍し、伝統的なイギリスのニットウェアとして世界中で愛されています。
フェアアイルのデザインは、幾何学的なモチーフの繰り返しが特徴で、自然をテーマにした要素や「OXO」の模様なども見られます。初期の島民は、シンプルな模様でストッキング、帽子、スカーフなどの衣服を編んでおり、使用する色は5色以下に限られていました。フェアアイルの編み方は、円形または二本針を使って円形に編むことが特徴で、これにより複雑なデザインがシームレスに仕上がります。
20世紀に入ると、カラフルな模様のフェアアイルセーターが人気を集め、1924年にはプリンス・オブ・ウェールズ(後のエドワード8世)が米国を訪れた際にフェアアイルセーターを着用したことで、一躍注目を浴びることとなりました。
ガーンジーセーター(Guernsey sweaters)
ガーンジーセーター(ガンジー(ganseys)とも呼ばれる)は、チャンネル諸島のガーンジー島発祥の伝統的なフィッシャーマンズセーターです。何世紀にもわたり船員や漁師の必需品として重宝されており、耐久性と機能性に優れています。
デザインには、強度を高めるガゼット、脱ぎやすさを考慮した三角のマチ、冷たい風から身を守るための長めの袖口やウエスト、ガーターステッチの裾などがあり、見た目と機能性が両立しています。また、ロープや鎖、波、網、砂のプリントなど、海に関連する複雑なパターンがよく使われます。
ガーンジー島での編み物技術は16世紀にさかのぼり、地元の女性たちが漁師や沿岸労働者のために編みました。厳しい海風や寒さから身を守れるよう、きつめに編まれていました。
17世紀までには、ガーンジーセーターは世界でも広まり、エリザベス1世やスコットランド女王メアリーもガーンジーのニットウェアを所有していたといわれています。メアリー女王は、処刑の際にガーンジーのストッキングを履いていたとも伝えられています。
現在では、ガーンジーセーターはその実用性だけでなく、ファッションアイテムとしても高く評価されています。
(補足:アランセーター(Aran Sweaters))
ガーンジーセーターと似たセーターに「アランセーター」があります。アランセーターも伝統的なセーターですが、アラン諸島は英国ではなくアイルランドの西海岸沖に位置しています。
アランセーターは、ガーンジーセーターから派生したと言われています。
ガーンジーセーターと比べて、アランセーターは幅広で厚みのあるパターンを使用し立体的な質感を作り出しています。多くの場合、アランセーターは単色で編まれます。デザインにはさまざまなケーブルパターンが含まれており、機能的でありながら、より装飾的な要素も強調されています。